アジア投資の最大拠点
ヨーロッパ最大の金融グループHSBCの香港拠点。香港内で140年以上の歴史を持ち、香港ドル発券銀行のひとつ。セントラルにある本店はその形から「蟹ビル」と呼ばれている。
HSBCグループ全体ではヨーロッパ、アジアを中心に全世界82カ国に1万以上の支店ネットワークを持つ(ただし、2012年7月31日付で、日本でのサービスは終了)。これらの支店およびVISAなどのネットワークによって、ATMカードが1枚あれば現地通貨での引出しが可能。グループ内に口座を持っていると、それを照会口座として他国でのHSBC口座開設がスムーズになる。
後述するように、香港内の証券会社(
BOOM証券や
KGI証券)との送金システムが確立されているので、手数料無料で入出金が可能。
総合口座でマルチカレンシー預金&投資が可能
基本通貨は香港ドル。香港ドル普通預金口座・当座預金口座・定期預金口座のほか、日本円を含めた主要10通貨で利用できる外貨普通預金口座・定期預金口座等がある。
香港上海銀行(HSBC香港)の最大の特徴は、これらの口座をすべてひとつの口座番号とステイトメントで管理できる総合口座 Consolidated Account。香港ドル普通預金および当座預金口座にリンクするATMカードと香港ドル建て小切手帳が自動的に発行され、投資口座を開設すれば、香港株や米国株、
オフショアファンド、債券、CDなどの売買もできる(金やIPO投資も可)。
総合口座には「プレミア Premier」「アドバンス Advance」「スマートバンテージ SmartVantage」の3種類あり、口座の仕組みは同じだが、それぞれ最低預金額やサービスが異なる(下表参照)。プレミアの場合、ファンドの販売手数料が0.5%割り引かれるが、担当者と直接やりとりしたいなどの目的がないかぎり、スマートバンテージで充分。ただし、スマートバンテージはもともと香港居住者が気軽に利用する口座のため、最近は担当者によって非居住者の開設を受け付けないケースもある。
窓口で円の入出金ができる
シティバンク香港との最大の違いは、窓口での現金の取扱い。シティバンク香港の窓口では香港ドルおよび米ドルしか扱っていないが、HSBC香港では日本円を含む10種類の外貨現金の出入金に対応している(下表参照)。
円口座への円の現金入金は1日7万5,000円までは無料、それ以上は入金額の0.25%の
リフティングチャージが発生する(出金は総額の0.125%)。他通貨に両替して入出金する場合は為替手数料のみ。
郵送での口座開設は実質不可能に。本店窓口では英語力がポイント
郵送による口座開設は香港非居住者用のサービスで、HSBC Premier内にあるInternational Banking Centre(IBC)が担当する。現地に足を運ばなくても口座開設できるため、人気の高いサービスだったが、2011年後半から、必要書類として、居住地(日本)の銀行が発行する「
Bank Reference(照会状)」を2箇所(2つの異なる金融機関)から取り寄せなければならないという条件が加えられ、日本居住者は実質利用不可能になった。
香港の窓口で口座開設する場合は、セントラルにある本店(蟹ビル)では「英語でのコミュニケーション力」が必要。担当者の説明や質問に正しく対応できないと口座開設は認められない。この点さえクリアできれば、投資口座も同時に開設できる。パスポートと英文の残高証明書(発行から3カ月以内)を持参すれば30分ほどで手続きが完了する。その他の支店については、担当者の判断次第。
セキュリティデバイスを使ったインターネットログイン
窓口で口座開設手続きが完了すると、ATMカードとPIN(暗証番号)、小切手帳が手渡される。支店や担当者によっては、テレフォンバンキング用PINやインターネットバンキング用の
セキュリティデバイスもその場で発行される。
テレフォンバンキングPINおよび
セキュリティデバイスが発行されなかった場合は、後日、自分で登録・手続きする。
セキュリティデバイスは6桁の数字(セキュリティコード)がランダムに表示される小さなアイテムで、ログインの際に使用する。送金指示を出す場合にも、セキュリティコードの入力が求められる。
インターネットバンキングを利用して香港内外に送金することができるが、事前に送金限度額を設定しておく必要がある。さらに、1日5万香港ドルを超える送金は送金先登録が必要になる(登録先への送金限度額は1日100万香港ドル)。
送金額設定および送金先登録はいずれも、インターネット上から規定のフォームをダウンロードし、記入・サインをしてオリジナルを郵送するか、窓口に提出する(ただし、長期間使用しないとセキュリティのためリセットされる)。
送金先登録書やインターネット上の送金フォームには文字数制限があり、
コルレス銀行を指定した送金指示は不可能。その場合は「電信送金申込書 Telegraphic Transfer Application Form」に記入・サインをして郵送する。
口座から香港ドル送金をしたい場合は、電信送金よりも小切手を利用したほうがずっと簡単。香港外への電信送金手数料は100香港ドル+海外送金手数料(送金先銀行による)。
香港の証券会社と組み合わせるのが賢い方法
投資口座を開設した場合は、インターネットを利用して下の表の金融商品に投資可能。総合口座内の香港ドル普通預金もしくは当座預金を決済口座として利用できる。香港株を取引する場合は売買手数料(売買代金の0.25%)のほか、月25香港ドルの信託手数料Safe Custody Feeが発生する(該当期間内に取引がなく、保有株もなければ免除)。
香港の証券会社、
BOOM証券、
KGI証券は日本から郵送で口座開設でき、手数料も安い(HSBC香港の小切手があれば
認証も不要)。HSBC香港の銀行口座とオンライン証券会社を組み合わせれば、実質的に投資口座を保有したのと同じことになる。インターネットバンキングの「
Bill Payment(請求書払い)」サービスを利用すれば、HSBC香港と証券会社間の入出金は無料。
いざというときは香港に行く覚悟を
通常使用している分には問題がないが、なにかトラブルが発生した場合は、日本からEメールや電話で指示を出すのはかなり大変。支店窓口で処理すべき手続きを海外から行なうので、担当者が誰なのか定まっていない場合もある。そんなときは、思い切って香港に行ったほうが早い。
本来は香港に住む個人・法人のためのローカルバンクであり、海外居住者向けの
オフショアバンクではないということを理解して上手に利用したい。